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だいぶ前に、「少年ケニヤ」というアニメ映画がはやりました。
アニメの詳しい内容は良く覚えていませんが、この本を初めて読んだときに
浮かんだのは、「少年ケニヤ」に出てくるアフリカの大地と鮮やかな色彩の
動物たちでした。
著者の岩合日出子さんのパートナーは、岩合光昭さん。
「おきて」や「くじらの海」など、ダイナミックな写真集をたくさん出している
動物写真家です。
「セレンゲティに行こう」
夫のそのひと言で決まった、アフリカ・セレンゲティ国立公園での
家族 3 人 1 年半の暮らしは、大きな事故や事件はありませんでしたが、
とても非日常的です。
セレンゲティでは、もちろん光昭さんは毎日、
野生動物の写真を撮るために草原へ。
一方で日出子さんは、外のかまどで食事をつくり、
手で洗濯をして、半日がかりで家の掃除をします。
水がめったに出ないこと、押し寄せるアリの大群の退治、
一日がかりの食料調達…、そういうことが、日出子さんの日常でした。
自分にできる限り、家族の健康と快適な生活をまもる、
それが自分の仕事だと、日出子さんは考えます。
ひとり娘の薫ちゃんは当時 4 歳で、日本から、はるばるアフリカへ
連れて行くのは、無謀に感じられる年齢でした。
それでもあえて光昭さんは、「出発するときは、『いま』なんだ」と、
連れて行くことを決めます。
日出子さんの不安を消すように、4 歳の子どもは素晴らしい順応力で
アフリカになじんでいきます。
日出子さんが記した、アフリカでの薫ちゃんの言葉は、まるで詩のように
美しいものばかり。
「わたしはおひるねをするためと、動物たちの、賢いおことばを聞きに行くのよ」
「シマウマの子供は死んでいます。死ぬと……、骨になります。
そして土になります。それが……、自然のきまりです……」
「ねえママ、ママのノートのおわりに、かきつけておきなさい。
『うすくらがりの中に、セレンゲティが、見えるような気がします』ってね」
いま、25 歳の岩合薫さんが、どんな大人になっていて、
あのころのことをどんな風に思い出しているのか、
どうしてもそれが知りたくなってしまいます。 |
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