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B 何度も読みたくなる本のオハナシ

棒がいっぽん
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棒がいっぽん
著者 作:高野文子
出版社 マガジンハウス
価格 \ 874 +税
発売年 1995/7
ISBN 4838706138

この本は、短編集です。
「美しき町」、「病気になったトモコさん」、「バスで四時に」
「私の知ってるあの子のこと」、「東京コロボックル」
ちょっと切ない、でも美しい日常の物語を読んでほろりとしたところで、
最後が「奥村さんのお茄子」。
同じテンポで読んでいると、あれっ?、となります。

「奥村さんのお茄子」は、多分(いえ、確実に)SF です。
宇宙人が、地球人を使って人体実験をしようと、
何十年後かに効果の出る毒を開発して、
それを(一方的な)被験者「奥村さん」にちゃんと投与したかどうかで、
25 年後の今、裁判にかけられている当時の担当の無実を証明するために、
宇宙から調査員がやってくる…
そういうストーリー。

この話を、表現として落とし込むテクニックが、私たちの想像の範囲外なんです。
毒を盛ろうとしている場所はお昼の社員食堂で、毒が入っているのが「お茄子」。
ビデオテープはうどんで、これを人力で再生(拡大もできます)します。
当時の担当者・先輩は、醤油さしに化けていて、
今の調査員・後輩は(警戒されないように精密に整形して)、
エプロン姿のお姉さん。

「1968 年 6 月 6 日木曜日 お昼 何めしあがりました?」と、話は始まり、
「ぼーがいっぽんあったとさ、はっぱかな、はっぱじゃないよ♪」
の歌が流れて、話が終わります。

高野文子さんは漫画家です。
デビューは 1977 年。
82 年の「絶対安全剃刀」から、単行本は今までに 6 冊しか出ていません。
だから、彼女の枕詞は「寡作の人」。
それでもいいの、5 年に一冊でも、10 年に一冊でも…
今まで出た本を何度も読み返して、みんなで待っています。

アニメでも映画でも、小説でもなく、マンガだからこその名作、
マンガ文化バンザイ!な、一冊です。

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