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D 何度も読みたくなる本のオハナシ

ドリトル先生
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ドリトル先生(全13冊)
著者 ヒュー・ロフティング著
井伏鱒二訳
出版社 岩波少年文庫
価格 各\ 680〜760+税
発売年 2000/6 新版発行
ISBN 4838706138
4-00-114021-7 C8397

神田の古本市に行ったら、「ドリトル先生」がまとめて出ていました。
箱はぼろぼろでも中身は新品、なつかしくて迷わず買いました。

ドリトル先生は、もともとは人間のお医者さんで、博物学者でもあります。
オウムのポリネシアに教えてもらって、たいていの動物のことばが話せるよう
になったら、動物の気持ちが分かる、と評判を聞きつけた動物たちが次々に
自主的にやって来てしまって、いつの間にか動物のお医者さんになっていました。
いつもお金がなくて、でも、動物を助けるためにアフリカに行ったり、
ツバメの郵便局を開いたり、サーカスをしたり、砂漠や月を旅したり…。
助手のトミー・スタビンズや、ブタのガブガブ、アヒルのダブダブ、
犬のジップと一緒にいろいろな冒険をします。
最初から通して読まなくても、どの1冊を取り出しても、
それぞれがひとつの楽しい物語です。

紹介しているのは岩波少年文庫ですが、古本市で手に入れたのは、
子どものころ読んでいたハードカバー版。
それぞれにひものしおりが色違いで二本、付いています。
昔は意識しなかった、この小さな工夫に気づいて嬉しくなりました。
兄弟ふたりで同じ本を読む、そんな光景が目に浮かびます。

最近になって、この本が「差別」だという意見が出ているそうです。
後から「差別用語」だと決まった、いくつかのことばが出てくるし、
「いつも助けてもらうアフリカの人たち」など当時のイギリスの世相が、
今の差別の基準にひっかかる、というのがその理由。

差別や偏見は、繊細でとても難しい問題です。
昔と今は違うことに気づかなかった、ではいけないんですよね。

でも、50年前の少し古くさい井伏鱒二訳は、ドリトル先生の住んでいる
「沼のほとりのパドルビー」の雰囲気に本当に似合っていて、
それがこの本の大きな魅力のひとつです。

この物語がなくなってしまうくらいなら、訳を新しくするのも仕方が
ないけれど、できればたくさんの名文句がそのまま残ることを願っています。
「オシツオサレツ」が原文どおりプッシュプル(Pushpull)になってしまったら、
子どもにはきっと何のことか分かりません。

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