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牛腸茂雄展の図録
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牛腸茂雄展 
A Retrospective
Shigeo Gocho
写真 牛腸茂雄
発行 国立近代美術館
開催年 2003 年
写真家の牛腸茂雄は、1977 年からの 10 年間に 3 冊の写真集と、
1 冊の画集を遺して、1983 年に 36 歳で亡くなりました。

この本は、2003 年の「牛腸茂雄展」の図録です。
大きさは、17cm × 20cm くらいで、
表紙と背表紙の文字はモノトーン、裏表紙は白一色、
薄くて、小さくて、控え目で、本だなの中ではあまり目立ちません。
でも、この一年間、本当に何度も何度も、取り出しては眺めました。
牛腸茂雄の写真は、始めて観た時よりも、後から何度も見直した時
の方が、強く心に残って、もう一度観たくなります。

去年の写真展で飾られていたのは、最初の写真集「日々」からの 18 点、
「SELF AND OTHERS」の全写真 60 点、画集「扉をあけると」からの
4 点のインク画、そしてプロジェクターで写された最後の写真集
「見慣れた街の中で」のカラー写真 47 点。
全ての写真に人が写っていて、その対象の大半は子どもでした。
そして、ほとんど、どの写真でも、横長の画面のほぼ真ん中に被写体、
という構図は変わりません。
新生児室のベッドで大泣きしている赤ちゃんの写真から始まって、
大きな木の前に、手をつないで立つ双子の女の子、
和室のベッドの若い夫婦、裏山に集まる家族一同、
あぜ道に並ぶ姉妹、窓際のセルフポートレート…
最後の一枚は、霧の中へ走り去っていく子どもたちの後ろ姿。

牛腸茂雄の作品は、どれもとても静かです。
たとえば、「SELF AND OTHERS」での子どもたちは、活き活きとした
動きの一瞬を切り取ったというより、ポーズをとったその瞬間に
「ストップ」をかけられて、そのまま緊張して動きを止めたように見えます。
子どもたちは、まっすぐに、じっと私たちを見つめます。
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