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生まれたときに本当に小さかったから「点子(てんこ)ちゃん」と呼ばれて
いるお金持ちの家の愉快な女の子と、
貧しい母子家庭の優しい男の子「アントン」のお話。
小学校の低学年のころ、私の大好きだった、双子の女の子が入れ替わる、
という少女マンガを読んだ母が、「たぶん原案はこの本だと思う」と与えて
くれたのが、ケストナーの「ふたりのロッテ」でした。
それをきっかけに読み続けた、全 9 巻のケストナー少年文学全集は、
シックな色づかいの函入り。持っていることが嬉しくなる全集です。
ケストナーは、いつでも子どもと大人を対等に公平に扱おうとします。
その公平さは、時にはとても厳しいけれど、とても徹底しています。
いつも病気がちのお母さんのために、お見舞いや、掃除に洗濯、
アルバイトまでしているアントンが、お母さんの誕生日を忘れてしまいます。
アントンのお母さんは、息子が自分の誕生日を忘れたことにすごくショックを
受けて、息子にどうしても優しくすることができません。
傷ついたアントンは、二度と帰らないつもりで家を出ます。
アントンが家を出たのは、冷たくされたことが悲しかったからではなくて、
病気のお母さんを傷つけた自分にたえられなかったからです。
でも、そこでケストナーは私たちに語りかけます。
「みなさんはアントンがすきですか。わたしはたいへんすきです。
しかし、考えなしに逃げだして、おかあさんをおいてきぼりにするのは、
はっきりいうと、あまり感心しません。
何かまちがったことをしたものが、みな逃げだしたら、
わたしたちはどういうことになるでしょう。どうなるか考えもつきません。
人間は分別を失ってはなりません。耐えしのばなければなりません。」
ケストナーは、きちんと子どもと向き合っています。
そして、最後まできちんと見ていてくれます。
恵まれていたり貧しかったり、運が良かったり悪かったり…、
そういう変えられない事実と、やさしくて正しい人になれるかどうかは
別の問題、そう励まされる気がするんです。 |
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